ポール・マッカートニー、プリンスなどに大きな影響を与えたロックンロール界の帝王リトル・リチャード。「のっぽのサリー 」「ルシール 」「ジェニ・ジェニ 」などのヒットナンバーは日本人にもお馴染みだ。リチャードが人気絶頂の25歳の1957年末 - オーストラリアでのツアーに向かっていた彼は、移動中の太平洋上空で、乗っていた飛行機のエンジンが火を噴くのを窓から目撃し「無事に着陸できたら牧師になる」と、イエス・キリストに誓い、搭乗機の無事着陸を祈った。無事シドニーに到着したリチャードは、周囲が止めるのに耳を貸さず突如引退を発表し、アラバマ州のオークウッド大学に入学して神学を修め牧師となったのだ(⬆上写真)。牧師となったリチャードは、ロックを罪深い悪魔の音楽として遠ざけゴスペル(宗教音楽)だけを歌っていたが、5年後の1962年に英国へのゴスペルツアー会場で、電撃的にロック歌手への復帰を果たしている。最初、会場でゴスペルを歌っていたリチャードに観客がまったく無反応だったのを見て、自ら封印していたロックンロールの解禁を決断、往年のヒットナンバーをその場で次々歌うと会場は割れんばかりの歓声が沸き起こったという。この英国での復帰コンサートの前座を務めていたのが、無名時代のビートルズだった。ロック歌手から牧師にそして再びロック歌手と数奇な運命を辿ったリトル・リチャード、1986年に、「ロックの殿堂」入りを果たしている。