人生の半分を悪女、残りの半分を聖女として生きた小説家瀬戸内寂聴さんが99歳で大往生した。自由奔放に人生を生きた彼女についての世間での評価は、「好き嫌い.com」が実施した瀬戸内寂聴3579人アンケート調査結果によれば、好き派が1113人で約30%、嫌い派が2577人で約70%だった。「小説家になります」と告げて学者だった夫の教え子と恋に落ちると、3歳の娘を残して四国・徳島の家を出た25歳の瀬戸内さんは、上京して小説家となったが既婚女性の不倫や愛欲を描いた性描写が男性中心の文壇で非難の的となり、「子宮作家」と呼ばれた(⬆当時の写真)。40代には当時の人気作家井上光晴氏との「不倫」が大きな話題となった。51歳の年に出家し、それまでの「悪女人生」と縁を切った瀬戸内晴美あらため寂聴さん、「売れっ子と呼ばれ、恋愛をしてもむなしかった。良い小説を書くため、文学の背骨になる思想が必要だった」と出家の理由について語っている。悪女から聖女へ、彼女の捨て身の選択は後半生に新たな道をひらいた。「源氏物語」現代語訳は、登場する女性たちが俗世を捨てることで愛の苦悩から解放されたという、仏教者ならではの解釈で高い評価を得た。出家する前は人気作家でありながら賞に縁がなかった瀬戸内さんが出家後の70歳で谷崎潤一郎賞、84歳で文化勲章を受賞した。良い小説を書くため、文学の背骨になる思想を つねに追い求め続けた寂聴さん、人間としての好き嫌いは別にして「小説家」としては見事な人生を生き切ったと言えるだろう。ご冥福をお祈りしたい。