大ヒットのエッセイ「バカの壁」で知られる東大名誉教授で解剖学者の養老孟司先生。医者の不養生で、83歳の昨年6月、検査で重度の心筋梗塞が見つかり、緊急手術で一命をとりとめたという。養老先生が半分死んだようになってICU(集中治療室)にいた時に、「お地蔵さん」が幻覚で現れたという。先生は「ひょっとしてお迎えが来たのでは」と思ったが、「ついていかなかったので、帰ってこられました」と臨死体験談を語った。高名な医学者である養老先生に「お迎えがきた」という体験談は、どういうことなのだろうか。医学的には、人は死が近づくと「脳内麻薬」と呼ばれる微量物質を分泌し、少しでも命が長らえるようにする。「脳内麻薬」とは脳の中脳と呼ばれる部分から分泌されるドパーミンという物質で脳に幸福感をもたらす作用があるという。この他、脳下垂体から分泌されるオキシトシンやセロトニンも幸福感をもたらす作用がある。これらの物質の作用によって現れてくるのが、臨死体験の際によく起こる幻覚症状だという。養老先生は、こうした「脳内麻薬」によって幻覚が起こるメカニズムは医者として当然ご存知のはず、高名な医者ならこうした「お迎え体験」をしたとしても医者としてのプライドから決して口にしないのに、私に「お迎えが来た」とフランクに話してしまう養老先生、まさに「知の巨人」である(笑)