ノーネクタイのMy Way

ネクタイを外したら、忙しかった時計の針の回転がゆっくりと回り始めて、草むらの虫の音や夕焼けの美しさ金木犀の香りなどにふと気付かされる人間らしい五感が戻ってきたような感じがします。「人間らしく生きようや人間なのだから」そんな想いを込めてMywayメッセージを日々綴って行こうと思っています。

フランシス・コッポラが目を見張ったアートディレクター石岡瑛子。

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日本人でアカデミー賞とグラミー賞2つを受賞したアートディレクター石岡瑛子(1938-2012)⬆(上写真右)の回顧展がいま東京都現代美術館で開かれている。彼女は、70年代、日本の広告界で活躍し有名になったアートデイレクターだが、80年代にニューヨークに活動拠点を移し、世界の一流アーティストたちからの指名が常に絶えないアートディレクターとなった。彼女が手掛けた代表作品は、フランシス・コッポラ監督の映画「ドラキュラ」(1992年)の衣装デザイン。剥き出しになった筋肉のような鎧や、エリマキトカゲから連想を得たウエディングドレスなど、その独創的なデザインでアカデミー賞の衣装デザイン賞を受賞した。この他、ワグナーのオペラ「ニーベルングの指環」(1999年)やシルク・ドゥ・ソレイユ「ヴァレカイ」(2002年)、北京五輪開会式(2008年)、ブロードウェイミュージカル「スパイダーマン」(2011年)の衣装などを彼女は手がけている。しかし、日本で有名だった彼女がまったく無名だったNYに活動拠点を移してなお世界のトップアーティストからの指名がなぜ絶えなかったのか。JAZZの帝王マイルス・デイヴィス『TUTU』のジャケット・デザインで彼女がグラミー賞を受賞したきっかけは、日本での仕事をまとめた作品集『石岡瑛子風姿花伝 EIKO by EIKO』にマイルスが魅了されたことがきっかけだった。アカデミー賞を取った映画「ドラキュラ」の衣装デザインの仕事の依頼は、映画「地獄の黙示録」の日本版ポスターの彼女のデザイン(⬆上写真左)がコッポラの目に止まったからだった。今回の石岡瑛子回顧展のタイトル「血が、汗が、涙がデザインできるか」は、彼女自身が発した言葉であり、血や汗や涙といった自身の中で沸き立つ感情の熱気を、デザインを通して人々に伝えることを目指した石岡瑛子の姿勢を象徴する言葉だ。彼女の持つこうした「熱気」が、マイルスやコッポラといった世界の一流アーティストのこころ を次々とインスパイア(刺激)していったに違いない。