イタリア制作の西部劇マカロニ・ウェスタン。クリント・イーストウッド主演の映画「荒野の用心棒」や「夕陽のガンマン」などの映画音楽に革命をもたらしたイタリアの作曲家エン二オ・モリコーネ氏が91歳で死去した。1960年代、セルジオ・レオーネ監督とコンビを組んだ『荒野の用心棒』は映画音楽と映像との関係を変えた画期的な作品だった。それまでの映画のように常にバックに流れていたオーケストラ音楽でなく、「音で絵を描く、セリフの代わりに音楽にストーリーを語らせる」という手法をエン二オ・モリコーネはこの作品で採り入れた。その斬新な構成は、当時の西部劇の価値観を大きく変え、口笛を使ったエンニオ・モリコーネのテーマ曲は印象的でマカロニ・ウェスタンを代表するサウンドとして一世を風靡した。それ以後はイタリア国外でも彼の評価が高まり、1987年には『アンタッチャブル』でグラミー賞を受賞、1989年には『ニュー・シネマ・パラダイス』で世界的な知名度を得た作曲家となった。2003年にはNHKの大河ドラマ『武蔵 MUSASHI』のテーマ音楽も作曲している。マカロニ・ウェスタンなど暴力や流血描写が多い映画への楽曲提供が多かったモリコーネだったが、本人は過度な流血描写を嫌悪していたという。彼の音楽の出世作となった『荒野の用心棒』に対しても公開当時から晩年に至るまで一貫して「俗悪な映画」であると言い続けていた。ショッキングな映像描写を嫌悪していた彼の「優しさ」は、2007年アカデミー賞特別功労賞を受賞した際、壇上で「このオスカーを、大いなる献身と愛情を持って長年自分のそばに常にいてくれた妻のマリアに捧げたい」と、愛妻マリア夫人に感謝を捧げた言葉の中に表れている。ご冥福をお祈りしたい。