NHKBSの番組「クィーン素顔のラプソディ」を見ただろうか。番組の中でクィーンのメインヴォーカルだったフレディ・マーキュリーへのインタビューの場面を見ていて驚いた。フレディはゲイであったためにエイズに感染してしまい、自分の「死」の恐怖に向き合っていた頃に受けたインタビューだ。「死んだら天国に行きたいか?」というインタビュアーの質問にフレディは「いや天国じゃなく地獄に行きたい」とカメラ目線で答えているのだ。彼の死後、この言葉はフレディ・マーキュリーが遺した名言として欧米のマスコミが彼について語る際にはくり返し引用されている(上の写真参照)「あっち(地獄)ではきっと凄く興味深い人たちに会えると思うんだよ」と彼は地獄に行きたい理由について淡々と語っている。死後の行き先が「天国」と「地獄」という考え方はキリスト教の考え方で、フレディはバルシー教徒(出身地であるインドのゾロアスター教)だったため「地獄」が恐ろしいものだと言う考えが無かったための発言という見方もあるが、彼がカメラ目線で語っている様子からは地獄が「凄く興味深い人たちが居る場所だから」というのが本当の答えだったように思われる。ファンにとってはフレディの肉体・衣装・ダンスそしてマイクパフォーマンスとそのすべてが「凄く興味深い人物」だった。ビートルズを超えてロック歌手としての「真髄」を極めようとしていたフレディが発した「地獄へ行きたい」という言葉は、だから「絵」になるのだ。元々のロックの語源は「ゆさぶる」という意味だが、フレディは「地獄へ落ちることをも辞さない」そのロック魂があったからこそ、死後30年経ったいまでもロックファンの魂を「ゆさぶりつづける」本物のロック歌手に成り得た、と言えないだろうか。