アメリカのオバマ前大統領が、年末恒例の自身のお気に入り曲、映画、書籍リスト2018をFacebookで紹介した。お気に入りの「映画リスト」の中に是枝裕和監督がメガホンを撮った日本映画「万引き家族」が選ばれた事にいま注目が集まっている。今年のカンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールを受賞した「万引き家族」は、社会の隅っこで置き去りになっている、"犯罪でしか繋がることのできない"登場人物たちを通して、家族や共同体の意義を問いかけた映画作品だが、オバマ氏はこの映画のどの点が気に入ったのか日本人としては気になるところだ。万引きという犯罪を皆が容認したうえでの家族愛というパラドックス(理に背く状態)を描いた作品にオバマ氏はなぜ惹きつけられたのだろうか。それは彼の生い立ちに関係しているように思われる。アフリカ系黒人の父とカンザス州出身の白人の母親の間に生まれたオバマ氏は、自分の著書の中で思春期の頃には黒人と白人という異人種間の血を引く自分を理解できずに深く悩んだと記している。オバマ氏の大学時代の友人でニューヨーカー誌の記者カサンドラ氏は「バラク・オバマは一見矛盾する事実を統合して首尾一貫したモノに変える驚異的な能力を持っていた。その原因は家庭では白人の母親に育てられ外の世界に一歩出れば黒人として見られていたためだ」と語っている。「万引き」と「家族愛」という一見矛盾している2つのモノを映画の中で見事に統合してみせた是枝監督の手腕にオバマ氏が思わず感動したというのも「さもありなん」と頷ける。