日本最大のテロ事件を起こしたオウム真理教の13名の死刑が執行されるとEU(欧州連合)は日本政府に対しすぐさま声明を発表し「死刑の廃止」を求めてきた。現在の主要先進国で「死刑制度」を持つのは日本とアメリカ(州により廃止)だけと言われている。日本が「死刑制度」にこだわる野蛮な国だと先進国は一方的に非難してくるが、歴史を紐解くと意外な結果が見えてきた。いまから1200年も前の弘仁九年(818年)の平安時代に嵯峨天皇が盗犯に対する死刑を停止する「宣旨」を公布し我が国で初めて「死刑廃止」が布告されているのだ。しかもこの死刑廃止が「保元の乱」の起こった1156年まで338年もの間ずーっと続いていた史実には驚かされる。3世紀以上に渡って死刑を廃止していた国の例は世界史上日本以外でどこにも見当たらないのだ。これほど長い歳月の「死刑廃止」が持続された理由について歴史学者の間で様々な意見が出されているがおおよその意見としては、死刑執行に伴う血による「穢れ」を嫌ったこと、因果応報という仏教の考えによって執行した人間に報いがもたらされることを恐れたこと、そして死罪を受けた人間の怨霊によるたたりを恐れたことなどが考えらると言う。やがて時代は貴族社会から武家社会へと変わり、敵の首を取るいわゆる「首級を挙げる」ことが手柄とされる時代となり事実上「死刑」が復活してしまったというわけだ。現代は戦乱の時代ではない、1200年前の平安の世に倣って「死刑廃止」について検討すべき時なのかもしれない。