先日行われた読売マラソンで市民ランナー川内優輝選手が実業団の選手を尻目に優勝した。その2週間前に行われた福岡国際マラソンでは粘りに粘って9位の成績だった。わずか2週間のインターバルで優勝すると言うそのタフネスぶりには驚かされるが「レースが練習」と公言している彼にしてみれば疲労の蓄積が優勝にはまったく影響しないということだろうか。この優勝によって2020年の東京オリンピックの代表選考会の切符を手にした川内選手は30歳の今年、国際大会の大舞台からの引退を表明している。長らく低迷を続ける日本の男子マラソン界の中にあって、彼の「根性走り」を受け継ぐようなスター選手がなかなか現れて来ない現状では日本陸連は東京オリンピックへの参加を彼にまだ期待するのだろうか。彼は実業団所属のいわゆるプロのマラソン選手と違って9時~5時のフルタイム勤務をした後に練習を続ける中でプロの選手に伍してゆける実力を発揮しているのだ。6年前の東京マラソンに一般ランナーとして出場し居並ぶ実業団の選手を押しのけ日本人トップの3位という鮮烈なデビューを果たした際には「このレースで死んでもいいと思って走った」と述べている。しかし翌年の東京マラソンで14位に終わると突然坊主になり「期待に応えられなかった自分はさらし者になった方が良い」と述べている。2年前の日本代表チーム入りの要請を断った際には「日本陸連には何度も裏切られた。自分には野性的な方が向いている」とも語っている。マラソン界のラストサムライ川内優輝、日本陸連が低迷を続ける男子マラソンで優秀な選手を育てたいのなら、彼の「根性走り」のスピリットを素直に学ぶ時ではないのだろうか。