ノーネクタイのMy Way

ネクタイを外したら、忙しかった時計の針の回転がゆっくりと回り始めて、草むらの虫の音や夕焼けの美しさ金木犀の香りなどにふと気付かされる人間らしい五感が戻ってきたような感じがします。「人間らしく生きようや人間なのだから」そんな想いを込めてMywayメッセージを日々綴って行こうと思っています。

「徹夜するのがエライと思ってる」、河瀬直美監督の怒り。

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あるテレビ番組を観ていたら、カンヌ映画祭で数々の受賞歴を持つ女性の映画監督河瀬直美さんがゲストで出演していた。司会者から「映画製作の現場で何か怒りたい事ありませんか」という質問に彼女は「徹夜するのがエライと思ってるスタッフが多いという点に怒りを感じている」と話したのだ。彼女はまだ48歳、彼女が仕切る映画製作の現場で今だに「徹夜することがエライ」と思っている製作スタッフが多く存在して居ることにシニア世代の私からすればまさに驚きだった。働き蜂のような人間が多かった半世紀前の我々の時代は「徹夜することがエライ」という馬鹿げた風潮は確かに存在していたが、21世紀の今なお日本人の労働に対するマゾヒステックなこうした考え方が生き永らえて居ることには呆れかえるばかりである。河瀬監督は映画監督としてのいわゆる王道を歩んできた人では無い。大阪の写真専門学校を出てから8ミリカメラで自分で撮った独自性のある映像作品が高く評価されたあと、初めて本格的な35mmカメラで撮った映画がカンヌで新人監督賞を受賞し今では日本を代表する映画監督の一人となったいわば苦労人タイプの映画監督である。彼女が本物の苦労を味わってきた人間だからこそ、「徹夜することがエライ」という我が国に古くから存在する馬鹿馬鹿しい労働慣習について既成概念に囚われずに堂々と批判できるのだ。労働の現場では暗黙の美徳としてこの非効率な「徹夜労働」が賛美され続けて居るニッポン。河瀬監督は「何の成果も上がらない非効率な作業」だと怒りを込めて切って捨てるが、それでもなおこの日本伝統の労働習慣は存在し続け、過剰な深夜労働によって電通の新入女子社員が自殺に追い込まれるような悲劇が生れてしまうというわけなのだ。河瀬監督にはこうした我が国の伝統的な悪弊を女性の視点からいかにナンセンスであるかを彼女の映画作品の中でぜひ問うて欲しい、とふと思った次第である。