先月、警視庁遺失物センターの発表で、東京都内での現金の落とし物の届け出が過去最高の年間37億円を突破したと言うニュースがあった。1年365日毎日々1000万円を超える現金が都内の警察や交番に届けられているということになる。この数字から読み取れるのは、世の中が不況と言われ続けて居るなか大切なお金を落としてもそれにに気付かないゆとりある日本人がいかに増えているかということだろう。一方でSuicaなどのICカードやスマートフォンによる決済などキャッシュレス全盛の時代においてなお現金を持ち歩く現金主義の日本人がいかに多いかという点にも注目だ。しかし何よりもこの遺失物として警察に届けられた都内だけで37億円という金額そのものが最も注目すべき点だろう。お金を拾った人がそれを遺失物として警察に届け出なければこの数字は決して記録されることはないのだから。外国人が日本の素晴らしさを表現する際にしばしば口にする「お金を落としても戻ってくる国」という言葉にその理由が隠されている。世界の国々では普通に考えられている「お金を落としたら決して戻ってこない」という常識を日本人はまるっきり反対に非常識な事と考えているからだ。「知らない人が落とした現金を届けてあげる」という日本人のもつ「美徳感」がこの37億円という記録的な数字を生みだしたというわけだ。それは外国人が口を揃える「日本人は正直」というのではなく「落とした人が可愛そう」という日本人ならではの「心の優しさ」から来る行為なのだ。2020年の東京オリンピックに向けてすでに年間の外国人の訪日観光客数は年間2000万人を突破している。日本を訪れる外国人がこうした日本人の「心の優しさ」に触れるオモテナシ体験を通して、ますますニッポンを好きになってくれれば嬉しい限りである。